公開日:2020.02.21
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一人ひとりの好みに合わせたアプリへと自動的に最適化。「強化学習型AI」とは

一人ひとりの好みに合わせたアプリへと自動的に最適化。「強化学習型AI」とは

数多くの企業がスマートフォンアプリを提供する今、ユーザーにそのアプリをダウンロードしてもらうのみならず、日々使い続けてもらうことは非常に困難な状況にあります。そこで、ユーザーに使い続けてもらうための最適化技術のひとつとして注目されてきているのが「強化学習型AI」です。本記事では、強化学習がなぜ鍵を握るのかを解説していきます。

毎日使われるアプリはごくわずか

消費者の様々な生活シーンでスマートフォンが利用されている昨今。業界問わず、あらゆる企業がスマートフォンアプリを展開し、新たな顧客接点の確立を試みています。しかし、ニールセン デジタルが行った調査からは、アプリ市場の厳しい現実が明らかになりました。

同社が公表したスマートフォン視聴率情報「ニールセン モバイル ネットビュー(Nielsen Mobile NetView)」(2018年12月時点の利用状況を示すもの)によると、「ユーザーが月に31回以上利用する」、すなわち「ほぼ毎日利用する」アプリは8.0個、ということが示されています。

ここで示されたデータは2017年から1~2個程度しか増加していないため、今後大幅に増加する可能性も低いといえます。また、年代間で大きな差は見られないことから、世代を問わず、ユーザーが日々利用するアプリの数に限りがあることは間違いなさそうです。

つまり、アプリを提供する企業側からすると、極めて競争率の高い状況でいかに継続的に自社のアプリや、自社サービスをユーザーに使い続けてもらうかを考えていく必要があります。それらの課題に対して、アプローチの仕方は様々ありますが、今回は「強化学習」の仕組みを取り入れて、ユーザーに使い続けてもらうための方法をご紹介します

<強化学習>とは

強化学習とは、ディープラーニングを始めとする学習技術において、いま注目を浴びている研究領域です。

機械学習とは、コンピューターが大量のデータを元に学習を行い、そこに潜むパターン(法則性)を見出す仕組みです。そして、機械学習の中でも、未知の環境において、コンピューター自らがデータを集めながら試行錯誤を行い、最適な行動を自動的に獲得しようとする仕組みが「強化学習(Reinforcement Learning)」です。

ロボティクス・自動運転・囲碁将棋等のゲームAI などの分野で盛んに研究されている技術ですが、 この強化学習の仕組みを、Webサイトやアプリに取り入れることで、事前に大量の学習データを準備しなくとも、ユーザーの嗜好をAI自らが自律的に解析し、コンテンツの表示や配信を自動的に最適化することが可能になります。

強化学習型AIのひとつ、「バンディットアルゴリズム」とは

「バンディットアルゴリズム」とは、ある実験を実施しながらも、その実験中に得られる成果(効果)もできる限り大きくしたい、といった場合に用いられるアルゴリズムです。例えば、2つのコンテンツをランダムに表示し、「どちらが高い効果を挙げられるか」を確かめる施策(A/Bテスト)を実施する際にバンディットアルゴリズムを活用できます。

A/Bテストの実施中は通常、十分なサンプルを集めるまではAとB、いずれのコンテンツも均等に表示することが必要です。しかし、仮にA案のほうが優れている場合、B案を表示している間には無駄なコストが発生していることになります。そこで、バンディットアルゴリズムを用いることで、テスト中に発生しうる無駄なコストを事前に予測し最小化することができます。これによって、A/Bテスト中に得られるマーケティング成果も最大化することが可能になります。

ユーザーの嗜好に合わせたパーソナライズを実現するまでの過程では、一定のコストが発生することも事実。そこで、バンディットアルゴリズムを活用することによって、その間のコストも最小化しつつ、最適なパーソナライズの仕組みを追求することが可能になるわけです。

強化学習型AIをアプリに取り入れるには?

強化学習などの最新技術を取り入れて「ユーザー好みのアプリ」を形にすることは、ユーザーに使い続けてもらう上で重要な要素の一つとなります。しかし、それらの仕組みをゼロから開発するのはコストと時間がかかり、現実的ではありません。

そこで、ゆめみでは「バンディットアルゴリズム」の最適化機能をWeb-API形式でご提供することで、既存システムへの迅速な導入を可能としました。

既存のWebサービス、アプリに気軽にご導入いただくことが可能であるため、気軽に強化学習の仕組みを既存のアプリに組み込むことが可能となります。機械学習のための事前の膨大なデータも不要で、Web-APIを呼び出すだけで、以下のような目的に利用いただくことが可能です。

  • バナー・広告のCTR最適化
  • 商品・アイテムの動的レコメンド
  • ユーザー×コンテンツの相関分析

現在、ポイントサイトのバナー表示の最適化や、食品通販アプリにおける、おすすめレシピ表示などで実際にご利用いただいており、好評をいただいております。合わせて、バンディットアルゴリズムを用いた施策を効率的に管理・運用するためのCMSもご提供しておりますので、ぜひお気軽にご相談ください。

今回ご紹介したような「成功するアプリ開発で求められる視点」については、次の資料に詳細を収録しています。経営戦略やビジネス方針に基づいたアプリ開発を実現し、顧客ロイヤルティの向上を目指したいとお考えの企業様は、ぜひ次の資料をご一読ください。