COVID-19のパンデミックがもたらした変化は、私たちの生活スタイル、価値観、そしてビジネスに深く影響することとなりました。その一端は、我々が家で過ごす時間の増加から見て取ることができます。外出規制に伴い、外出や外食の機会は大幅に減り、それに代わって、私たちの生活空間を豊かにするためのモノへの投資が増えてきました。インテリアへのこだわりが増えたり、より高品質な日用品を求める傾向が見受けられます。
こうした生活スタイルの変化は、我々の購買体験や価値観にも影響を及ぼしています。特に、EC(電子商取引)の利用が急速に拡大したことは、大きな変化の一つです。商品が翌日に自宅まで届くことが当たり前となりました。好きなタイミングで、自分に合った数だけ、身近な場所で商品を手に入れることが可能となったのです。接客を介さずに自分の欲しいものを手に入れられるという価値観が、さらに広がることになりました。
この変化は小売業界にも大きな影響を及ぼします。コロナ前では、実店舗で商品を購入するのが一般的でしたが、外出規制によりこの慣行は困難となりました。その結果、事業者は新たな販売方法を模索し、ECを通じた販売が急速に拡大したのです。大きな店舗スペースの削減と、接客員の役割や雇用人数の削減といった方針が採用され、ビジネスの規模縮小と効率化が進められました。
日用品の購入増加に伴い、配送機会が増え、それに伴って配送業界では人員の拡充が必要とされました。また、技術と空間、人々の価値観の融合により、新たな価値が生まれています。これは移動しながら注文でき、必要な時に、必要な量の商品を購入できるようになったことを指しています。
マスク解禁と共に以前の生活スタイルが徐々に戻りつつある現在でも、購入体験の変化は続いています。スマートフォンを介してメニューや在庫を確認し、移動しながら注文できることは、今後はあらゆる場所で増えていくこととなるでしょう。
実店舗でもオペレーションは向上しています。例えば、飲食店では券売機と決済が別端末となる事例がありました。このような効率向上などでタスクが削減されるため、従業員の数は減っていくことが予想されます。
コロナ禍を経て、心を豊かにする空間利用から生活全体を豊かにする空間利用への変化が見受けられるといえるでしょう。また、「私」の空間・モノの利用から「私達」の空間・モノ利用へと拡張しているともいえます。それぞれが自分だけの世界を楽しむのではなく、共に楽しむことで生活をより豊かにしていく。これこそが、コロナ禍から学び、我々が歩むべき新たな道ではないでしょうか。
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参考事例
全国的に人気の自販機冷凍ラーメン「ヌードルツアーズ」
「ヌードルツアーズ」という冷凍ラーメンが全国的に大評判です。その自販機は全国で500台以上を展開。開発は丸山製麺で、コロナ禍への対策からこの事業が始まりました。SNSで話題となり、ピーク時には1日に600食が販売されたということです。
価格は1食1000円で、主な客層は20代後半から50代。特に女性が4割を占めています。自販機ビジネスの可能性を見つめ、大手事業者と提携しているそうです。
現在のラインナップは25種類。あっさり系からこってり系、鹿児島などのご当地ラーメンからミシュラン系まで、幅広いラーメンが揃っています。
COVID-19によるビジネスモデルの変革が良い方に働いた好例ではないでしょうか。
「The Label Fruit」が生み出した次世代の体験
“The Label Fruit”は、フルーツオレを自分好みにカスタムできる新世代の無人ドリンクスタンドです。Z世代向けのモバイルオーダー専門店となっております。
スマホを使い、ラベルデザイン、ミルクの種類、甘さ、トッピングまでを自由に選びます。オリジナルのフルーツオレを作り出すことが可能です。「食べるフルーツオレ」は、果実がたっぷりと詰まった濃厚な味わいのドリンクを受け取れます。店舗に受け取りに行くときには、自分でカスタマイズした商品がロッカーの画面に3D映像として現れます。注文すれば店舗で待つことなく、ロッカーから直接商品を受け取れます。
一般的なカフェとは違い、このようなカスタマイズ性と体験が合わさった飲食店舗の形は今後とも加速していきそうです。