デジタルトランスフォーメーション(DX)の流れが広がり、企業のビジネスモデルを根底から変えようとしています。ただ、実際のところどのように具体的に進めるべきなのでしょうか?
目次
DXを進める際のキーワードは「言語化」
まずDXを、「デジタルテクノロジーを活用してユーザーの体験価値を向上させ、ビジネスが変わっていくことを目指すもの」だと本記事では定義します。
DXを成功させるためには、「言語化」が重要です。これは自社内でDXの意義や目的について共通の理解と言葉を持つことを意味します。
DXで変えないものとは「ユーザの体験価値を向上していくこと」です。一方で、「ユーザの体験価値を向上させる手法」がDXを押し進めるなかで変わるものとなるでしょう。それらを切り分けるためにも、言語化が重要です。
DXにはデータ活用が欠かせません。ただ、競争相手が導入しているからといって無闇にAIを導入するのではなく、適切な手法が必要です。データ活用やデジタル化はDXの前工程と考え、これらを通じてユーザーの傾向や思考を理解し、データを得るためのコミュニケーションを設計します。そして、得たデータを活用して業務の最適化やコスト削減を行い、適切なデジタルコミュニケーションを設計するために評価制度の見直しも行います。
DXは、
- ユーザーとのコミュニケーションが変わる
- (上記に伴い)組織の体質や意思決定が変わる
- ユーザーの体験価値が向上してビジネスのあり方が変わる
という三つの段階に分けられます。これらの流れを前提に、データ活用の目的を、明確に言語化することが必要です。
強みの言語化とは——コープこうべアプリの事例
言語化と一口に言っても、様々なアプローチ方法があります。DXを推進していきたい場合には、ぜひ「強みの言語化」を行いたいものです。企業が持つ価値・強みを活かしたコンセプトがないと、どれだけ利用者視点を取り入れても芯のないサービスになってしまいます。
言語化の良い例として、「コープこうべアプリ」の事例をご紹介させてください。このアプリは、強みとして「協同組合」の活動を活かし、ユーザの体験価値を高めるためのさまざまな機能を提供しています。地域コミュニティを通じた情報発信や教え合いをオンライン上で可能にし、ロイヤルユーザを3.7倍に増加させ、継続利用者を毎年前年比180%増にするなど、成功を収めています。
コープこうべアプリの場合、利用者視点/ユーザ体験を踏まえ企業の強みを活かせる、体験価値の言語化を実施しました。サイモン・シネックさんが提唱したゴールデンサークル理論に基づき、Whyから考えるワークショップを実施したところ、「協同+地域づくり」に基づくソーシャル領域の取り組みが体験価値のコアなのではないかという視点が得られました。
具体的な施策としては、地域コミュニティならではの情報発信場を提供したり、ユーザがよく買う商品や気になるワードを「人気の保存条件」として表示する機能が検討され、実装もされています。
アプリ上での「教え合い」や「支え合い」を重視し、コミュニケーションを変革するための場作りが行われました。投票機能を提供し、利用者が商品開発に気軽に参加できる仕組みも実現しています。2万人の参加や1000件以上のコメント書き込みがされるなど、コミュニティの活性化に寄与しました。
もちろん業務効率化も行っています。宅配の配達時の留守率を可視化したことで、配達時に必要なドライアイスの量を最適化し、1割のコスト削減を実現しました。
さらに、新たに実装した地域のたすけ合いプラットフォーム機能では、マッチング成約率が95.0%となっています。ビジネス変革が言語化によって促されている事例と言えるでしょう。
ゆめみの言語化できる仕組み
ゆめみは、デジタルトランスフォーメーション(DX)の実施において、自社のゴールや価値をしっかりと言語化し、それを実現するための明確なプロセスを持っています。体験価値を明確に言語化し、その上でDXを推進するサポートをしているのです。
私たちは開発プロセスにおいて人間中心設計(Human-Centered Design、HCD)というアプローチを採用しています。
これは、ユーザーを中心に据え、その人が感じる価値を明確に定義し、その実現に向けたプロセスです。以下の4つのステップで構成されています:
- ユーザーが何を求めているかを把握する
- その要望に対する課題や問題を設定する
- その課題や問題を解決するための解決策を実施する
- 実施した結果を評価・検証し、改善を繰り返す
開発の段階では、大きく3つのステップがあります:
- ユーザーを知る
- ユーザーを包含する
- サービスをユーザーに届ける
各ステップには細かなタスクが存在します。これらは新規事業だけでなく、既存のサービスを改善する際にも適用可能です。これらのアプローチを活用して、体験価値の向上と開発プロセスの効率化を実現させています。詳細が知りたい方は、ぜひお問い合わせください。
最後に
DXは固い取り組みだと思われがちですが、体験価値にフォーカスするとむしろDXを推進できるのは「愛されキャラ」なのではないかと思っています。エモーショナル人材、つまりは情緒的な価値まで考えられ、行動できる人こそが、周りの行動変容を起こせるのではと考えています。
DXの推進については、ロジカルに考えるだけがそのアプローチではありません。ワークショップやお打ち合わせのなかで多角的にDX推進を考えたい方は、ぜひ気軽にお声がけください。
染矢 幹基:株式会社ゆめみ 取締役COO